目次形式に切り替える475.頭痛の漢方について
西洋医学の場合、頭痛の時は鎮痛剤を使います。
頭痛のタイプは関係なく、どのような頭痛でも緩和されます。
もちろん、中には鎮痛剤が効かないようなひどい頭痛もあります。
漢方の場合は、頭痛の原因によって使う処方が違います。
偏頭痛
血管が拡張して、神経を圧迫するものです。
ズキンズキンと脈うつように痛みます。
少し冷やしてあげると血管が収縮して楽になります。
カフェインも血管を収縮させるので緩和されます。
緊張から解き放されてリラックスした時におこりやすいです。
また気圧が下がると血管も膨らみやすくなりおこりやすくなります。
生理前におこりやすいのも特徴です。
人によって、眼の前がチカチカしたり、吐き気がある事もあります。
中医学的には、気の流れが悪いタイプと水の流れが悪いタイプに分けます。
どちらも少し熱がこもっていると考えます。
ただし、手足は冷える事が多いです。
緊張性頭痛
偏頭痛と逆で、血管が収縮しておこります。
絞られるような鈍い痛みが続きます。
頭痛の程度は偏頭痛ほどではありませんが、首のこりや不快感を伴います。
血管を広げるような事をすると良いです。
入浴などでリラックスするのは良いでしょう。
原因としては、気の流れが悪い気滞と、血の流れが悪い瘀血や血虚があります。
気の流れは血管の動きを調節しているので、気の流れが悪くなると偏頭痛も緊張性頭痛もおこりやすくなります。
先に緊張性頭痛がおこり、それから偏頭痛に移行する場合もあります。
群発頭痛
非常に激しい頭痛です。
中医学の考えでは、熱毒が神経を刺激しておこると考えます。
熱毒以外に、湿熱や瘀血のタイブもあります。
舌の色や状態、脈の状態でどのタイブか判断して漢方薬を使います。
474.蕁麻疹の中医学的考え方
蕁麻疹は、体の中の邪気や毒素が原因と考えます。
邪気にも種類があり、蕁麻疹の原因になりやすいのが風邪(ふうじゃ)です。
風邪にも2種類あり、一つは外から侵入する風邪。
もう一つは体の中で作られる風邪。
区別するために、外からのものを外風、体の中で作られるものを内風と言っています。
実は風邪(かぜ)も風邪(ふうじゃ)の一種なのですが、同じ漢字を使うのでややこしいです。
ですから、中医学では風邪(かぜ)は感冒と言っています。
風邪の特徴は、動き回る事。
動き回るので、蕁麻疹は出たり引いたりします。
もう一つの特徴は他の邪気や毒素と結びつきやすい事です。
あたたまると出る蕁麻疹は熱邪とむすびついて風熱という状態になっています。
また、湿と結びついたり、毒と結びついたり、瘀血と結びついたりします。
蕁麻疹はまず風邪を取り去る去風薬を使います。
それ以外に、どの邪気や毒素と結びついているか判断して、それを取り除くものを使います。
邪気が風邪だけなら比較的簡単です。
ですが、他の邪気や毒素と結びついてしまうと治るまで一定の時間がかかります。
蕁麻疹は病院では症状を改善する事は出来てもなかなか根本的な治療が出来ません。
蕁麻疹で漢方を使うのはとても良い選択肢だと思います。
473.免疫は強さよりバランスが大切
免疫は強ければ強いほど良いようなイメージだが、そうではない。
強さよりもっと大切なのは免疫のバランスだ。
免疫を軍隊に例えてみよう。
軍隊の総力というものはある程度決まっている。
それをどのような敵に対処するか割り当てるかが免疫のバランスだ。
生まれたての免疫は、敵がなにか知らない。
胸腺だとか、腸の中のバイエル版などが免疫を教育する。
この時、正しい敵を認識させる事が大切。
花粉などを敵として認識させてしまうと、アレルギーになってしまう。
もっと都合が悪いのは、自分の体を敵として認識してしまう事だ。
そうすると、自分の体を攻撃してしまう。
体のどの部分を敵と間違えるかによって壊される部分が違い、出てくる症状も違う。
ただ、症状が全く違っても免疫の誤動作という事に変わりはない。
注意したいのは、先程も言ったが、免疫の総力はだいたい決まっているので、間違った方向に使われてしまうと、今度は本当の敵を攻撃する力が足りなくなってしまう。
だから、大切なのは体にとって今の本当の敵は何なのか的確に判断して、それをちゃんと排除出来るようにする事だ。
免疫は目に見えなくて働きがあるもので、昔の人は「気」と言った。
これらのバランスは「気の流れ」という。
気の流れを正しく保つ事が大切なのだ。
472.生理が遅れる時
生理が遅れる中医学的な原因は3つあり、一つは、色々な汚れが骨盤、子宮にたまっている場合で、もう一つは気の流れが悪い場合で、最後の一つは必要なものが足りない場合です。
1.汚れが溜まっている場合について
汚れにも種類があります。
血液の汚れ(中医学では瘀血という)が溜まっている場合と、水や油の汚れ(これを中医学では痰湿とといいます)が溜まっている場合があります。
血液の汚れが多いですが、両方の場合も多いです。
こういった汚れが沢山たまると、卵巣が固くなり、排卵しにくくなります。
また、子宮の内膜も固くなったり、厚くなりすぎて剥がれにくくなります。
生理が遅れるだけでなく、生理痛の原因にもなります。
また、子宮筋腫やチョコレート嚢胞の原因にもなるので、できるだけ骨盤の汚れを溜め込まない事が大切です。
骨盤の汚れがどうして出来るかは、はっきりとは解らないですが、一つは遺伝的な要素があります。
それ以外に、トランス脂肪酸の取りすぎなども関係すると思われます。
また生理中、特に生理の初日目や二日目にお腹を冷やしたり激しい運動をすると経血が排出しにくくなり、骨盤の汚れにつながると考えられます。
月経カップの良し悪しについてはまだ結論は出ていませんが、中医学的には不自然な状態と考え、なるべく使わないのがオススメです。
布ナプキンは経血の排出を助けるので、面倒ですがとても好ましいと思われます。
生理中のストレスも経血の排出に影響します。
たまってしまった汚れを綺麗にする漢方は沢山あります。
まず瘀血ですが、よく使われているのが桂枝茯苓丸です。
ただ、桂枝茯苓丸は古くなって固まってしまったような瘀血に対しての効果はあまり強くありません。
また、桂枝茯苓丸は熱に弱い成分が含まれているためエキス剤は効果が弱くなります。
当店は熱を加えていない丸薬を使っています。
桂枝茯苓丸という名前が示すように、初めから丸薬にして飲む事が記載されています。
昔の人は煎じたり熱を加えたりすると効果が出にくくなる事を知っていたのだと思います。
古くなって固まった血液を陳旧瘀血と言います。
陳旧瘀血は新しい瘀血に比べるとかなり手強いです。
血液をサラサラにするのは血管の中の血液の流れを改善するのには適していますが、血管の外で固まってしまった血液を溶かし出す事は出来ません。
そこで登場するのが動物性の生薬です。
例えばミミズとかヒルです。
当店は状況に応じて動物性の生薬を使っています。
痰湿という汚れですが、これは繊維、脂、水などの汚れです。
痰湿を綺麗にするものも種類が沢山あり、体質に応じて選ぶ必要がありますが、一番良く使われているのが温胆湯です。
これは効果はとても良いですが、苦くて飲みにくいのが難点です。
顆粒のものなのでオブラートにくるんで飲むなどの方法が良いでしょう。
これらの方法で骨盤の汚れを綺麗にすると、排卵がスムーズになり、内膜も剥がれやすくなります。
生理が順調になるだけでなく、生理痛、生理前の肌荒れなどにも効果があります。
2.気の流れが悪い
中医学では、目に見えなくて働きがあるものを気と言います。
ホルモン、自律神経、免疫などです。
これらのバランスを気の流れと言います。
ストレスが強いと、まず自律神経のバランスが悪くなります。
自律神経のバランスが悪くなるとホルモンバランスが悪くなります。
生理が順調に来るためには、FSH LH E2 P4などといった様々なホルモンが規則正しく順番に放出する必要があります。
これらのホルモンの過剰、不足や、分泌されるタイミングが悪くなると排卵しなかったり、内膜が厚くならなかったり、内膜が剥がれにくくなります。
ですので気の流れを整える事がとても大切です。
当店は、全体的に気の不足があるときは五加神をよく使っています。
また気の流れを整える、逍遥顆粒、香蘇散、調丁顆粒、晶三仙、開気丸などもよく使っています。
気の流れを整える漢方は沢山あります。
昔から中医学では「病は気から」と言い、「病気の始まりは、気の流れが悪くなる事だ。気の流れが悪くなると血の流れや水の流れが悪くなり、必要なものが届けられなくなったり、汚れがたまり、様々な病気が起こる」と考えていました
ですから、気の流れを整える事はとても大切です。
特に、イライラしやすい人や、鬱気味になりやすい人は要注意です。
3.必要なものが足りない場合について
必要なものは、気、血、陰、陽です。
ここの気は、気の流れの気とは少し違い、簡単に言うとエネルギーです。
陰にも色々ありますが、ここでの陰は潤いのようなものです。
陽は体をあたためる力です。
生理のために特に必要なのは血です。
ただ、気が無いと血は流れません。
経血は血だけでなく、癸水といって栄養のある水を含んでいます。
ですので、陰も必要です。
もちろん、冷えも生理が遅れる原因になるので陽も必要です。
これらのうち、どれが足りないかを的確に判断して必要なものを補う事が大切です。
これは漢方を飲むだけでなく、食事にも注意する事が大切です。
食事は体をつくる材料で、漢方はそれをうまく組み立てる大工さんです。
両方がそろって始めて、気、血、陰、陽が補充されます。
471.症状は本質ではない
患者さんから言えば、早く症状を改善したいという気持ちが強いでしょう。
例えば、咳が出るなら咳をとめたい。
かゆみがあるならかゆみをとめたい。
眠れないなら、早く眠りたい。
そうなると、「咳に良い漢方はありますか?」とか、「かゆみに良い漢方はありますか?」「よく眠れる漢方はありますか?」というふうになります。
ただ、どんな咳にも良く効く漢方というものはありません。
どんなかゆみにも良く効く漢方もありません。
飲めばすぐ眠れる漢方もありません。
中医学から見れば症状というものは、結果であり、二次的なものです。
症状が出るのは、必ず原因があります。
漢方は咳を治療するのではなく、原因を治療します。
ですから、「とにかく咳を止める」漢方はありません。
まず、何故、咳が起こるかを考えます。
そして、そのメカニズムを考えます。
これを病因、病機と言います。
例えば、もともと肺が弱い肺気虚の体質の人が無理をして体力が低下します。
肺は免疫と関係して、これを衛気と言います。
衛気が不足すると外邪とかが侵入しやすくなります。
外邪にも色々種類があるのですが、例えば寒さを含む邪気、寒邪が侵入したとします。
ここまでで、弁証は、「肺気虚による風寒外束」と言います。
弁証が決まると治療原則が決まります。
治療原則は、「辛温解表、補肺気」となります。
ここまでを弁証論治と言います。
弁証論治に基づいて、処方を決定します。
この場合、使う処方も体質などにより違いがあります。
風寒外束の場合、よく使うのが桂枝湯や香蘇散です。
寒邪がつよく、汗が出ない場合は葛根湯や麻黄湯も使います。
肺の衛気虚があるので、衛益顆粒を併用するか、咳がなおってから体質改善として続けます。
このように考えると、「咳が出るからこの漢方」と簡単にはいかないのです。
470.正しい漢方の使い方
漢方薬の正しい使い方は弁証論治にもどづいて使います。
弁証論治は中医学の基礎なのでずか、正しく理解するのに半年くらいかかると思います。
例えば、銀翹散の働きを中医学的に言えば、辛涼解表(しんりょうげひょう)になります。
これが中医学的に正しい効能効果です。
ただ、中医学を勉強していない人に、辛涼解表と言ってもチンプンカンプンです。
本当はすべての人に中医学的な予備知識を持ってもらえれば、こちらは説明が簡単なのですが、半年かかる基礎を数分で説明するのは困難です。
それで、仕方なく、現代医学的な解釈で説明します。
漢方の能書もそのようになっています。
ただ、能書に書かれていない事が沢山あります。
漢方薬に西洋医学的な能書をつけるため、矛盾が沢山あります。
効能効果に書かれていなくても効果が出る症状が沢山あります。
効能効果に書かれている症状でも、弁証論治的に違う場合は効果が出ません。
こんな事を言うのは失礼かも知れませんが、漢方の知識が無い人が正しい漢方を選ぶのはかなり難しいと言えます。
同じように、西洋医学の知識しかないお医者さんが正しい漢方を選ぶのも難しいでしょう。
西洋医学と中医学は全く違う医学だからです。
469.老中医への道
中国では経験豊富で熟練した中医師を老中医と言い、皆にとても尊敬されている。
老中医とはどのようなものなのか?
西洋医学と中医学。使う薬の種類が違うがホントの違いはそこではない。
診断が違うのだ。
西洋医学の診断は検査。
レントゲン、エコー、血液検査などなど科学的。
中医学はそんな検査がなかった頃からの医学。
だからもっと原始的だ。
使うのは熟練した五感だけ。
四診と言って望診、聞診、切診、問診に分けられる。
望診は経験豊富な目で患者さんを見る。
経験が深まると、患者さんを見るだけで、体力がなさそうだなぁ、胃腸がよわそうだなぁ、瘀血もありそうだなぁ。とわかるようになる。
そして望診で一番大切なのが舌の状態を見る舌診。
舌本体の色、形、苔の状態など詳しく判断する。
聞診は、匂いをかぐ。病気特有の匂いがある。
切診は、体に触れてみる。
切診の中でも脈診はとても大切。
熟練すれば舌診と脈診でもだいたいの状態が判るようになる。
ここで、問題になるのが「熟練すれば」と言う部分。
中医学は知識だけでは難しい。
30才40才は鼻垂れ小僧。
50才からやっといっちょまえ。
60才以上になると老中医といって皆に尊敬され、大切にされるようになる。
長い、長い道のりなのだ。
468.漢方薬の使い方
西洋医学と中医学を比べると、薬の種類が違うが、それ以外の診断そのものが違う。
中医学の診断に基づいて、漢方薬を使う。これが本当の意味の中医治療。
しかし、最近はどうも西洋医学の診断に基づいて漢方薬が使われる事が多くなって来ているように思う。
確かに西洋医学の診断で漢方薬を選べるなら便利だとは思う。
しかし、それは正しい使い方ではない。
正しい使い方をしないと、効き目が出にくいだけでなく思わぬ副作用が出る事になる。
これは副作用というより、使い間違え。
漢方薬の代表の葛根湯。
実はこれはかなり使い方が難しい漢方だ。
467.頑張れキネシン
最近、NHKの番組によく登場するのがキネシンだ。
キネシンは、細胞の中にあるタンパク質。
ただ、その様子は普通のタンパク質とは全く違う。
まるで生きているようなのだ。
まず、二本の足がある。
二本の足は、「えっちら」「おっちら」と、吸盤でもあるかのように物に張り付いて前に進む。
カワイイ。実にカワイイ。
NHKもこのCGはお気に入りのようで、似たような画像がよく表示されている。
二本の足の上には長いヒモがある。
ヒモの先にはまた吸盤のようなものがあり、これに物をくっつけて運んでいく。
生きているとしか思えない。
こんなものが、一つの細胞の中に無数にあって、働いているのだ。
「働く細胞」というアニメがあるが、キネシンはそれよりもさらに小さい、たった一つの細胞の中の働くタンパク質の話。
たった一つの細胞の中で、沢山の種類のタンパク質がそれぞれの役割で働いている様子はまるで小さな都市のようだ。
いくら科学が進んでも、人間はたった一つの細胞も作れない。
それもそのはず、こんなもの、作れるはずがない。
466.漢方の需要
漢方の需要は私が漢方を初めた頃と比べて随分と変わってきた。
漢方を初めた頃は、病院で治らない難しい病気の人が漢方に頼る事が多かった。
例えば重症の慢性関節リウマチ。
痛み以外にいくつかの関節が変形している事が多かった。
また、アトピー性皮膚炎。
アトピー性皮膚炎の方は今でも相談があるが、当時は今とは比較にならないくらい重症の方が多かった。
C型肝炎もとても多かった。
こういう相談は今は少なくなった。
病因の治療が進歩したというのが一番の理由だろう。
最近の漢方相談は、ストレスによる体調不良、不眠、朝起きられないなどが多い。
また、生活習慣病の改善と予防の相談も多い。
漢方が難病の治療から、予防医学の一貫にシフトしている感じがある。
確かに、病因の治療は血圧が高いなら降圧剤、コレステロールが高いならコレステロールの薬といった対症療法が多い。
これらのものも重症なら必要だけど、それ以前にやはり漢方や食事、運動などで体調管理をする事が大切だと思う。
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