目次形式に切り替える457.潤い不足は水を飲めば解決するのか?
中医学で、潤い不足を津液不足と言います。
津液は「しんえき」と読みます。
津液はただの水ではありません。
いろいろな栄養が含まれた、体に必要な潤いです。
確かに、水分が不足すると津液も不足します。
このようなものは一時的なものです。
もう少し、本質を考えると、津液不足は、栄養不足と水を保持する力の不足です。
栄養を含まないサラサラした水は、体内にとどまらずすぐに出て行ってしまいます。
栄養が含まれた水は、細胞の中や血液の中に入ります。
またリンパ液の原料にもなります。
さらに栄養のある水を保持する力も大切です。
津液不足の代表に麦味参顆粒があります。
麦門冬と人参は潤いを助ける作用があります。
人参には津液だけでなく気を補う作用もあります。
五味子は潤いが逃げないように保持する作用があります。
この五味子の作用のおかげて麦味参顆粒はただ潤すだけの処方よりも効き目が良いものとなっています。
456.目はどうして肝になったのか?
中医学では肝は目に開竅するとなっている。
開竅の意味はわかりにくいが、出入り口のようなものと考えてみて欲しい。
肝という臓器の様子は目に現れるという意味だ。
どうしてこのようになったのだろうか?
「鳥目」という病気がある。
これはビタミンAの不足なのだが、昔の人はビタミンAなんて知らない。
ビタミンAが多いのは、レバーだ。
あるいはヤツメウナギの肝。
どちらも肝臓だ。
肝臓を食べると目が良く見えるようになる。
おそらく、そんな単純な理由から肝と目が結びついたのでは無いかと思っている。
昔の医学はシンプルなのだ。
455.補腎薬について その2
腎を補うのは難しい。
だから、補腎薬の効果は、効果が出るまで時間がかかると言われる。
補腎薬の中で、比較的効果が速くでるのが、精力に関してだ。
だから、最初の補腎薬は、男性は精力剤、そして女性は美肌と考えられる。
精力増強といえば、マムシ、すっぽん、オットセイのペニスなどいわゆるゲテモノ系だ。
そして、あの附子も精力剤の一つだ。
女性の美容の代表は、燕の巣とか亀板だろう。
こういったものは、確かに効果はあると思う。
ただ、価格がとても高い。
そして、飲む人はただ単に精力剤、あるいは美容の薬として中医学的な考えもなく服用するから、体質にあわない事が沢山ある。
補腎薬のもう一つに、老化にかかわるものがある。
つまり老化防止としての補腎薬だ。
漢方には老化防止の作用があるものがある。
ただ、老化防止ついて言えば、補腎薬より、活血化瘀薬、化痰薬などむしろ汚れを綺麗にするものに顕著なように思う。
454.補腎薬について
中医学で、腎について言えば、1つ目は精力、2つ目は老化、3つ目は骨だろう。
今回は骨について考えよう。
現代医学では骨はカルシウムとわかっている。
しかし、昔の人はカルシウムというものはわかっていなかった。
ただ、骨を食べれば骨が丈夫になるだろうとは考えた。
それで、一番丈夫な骨は何だろうと考えた。
そこで登場するのは虎だ。
そこで珍重されたのが虎の骨。
虎の骨の中で、前足の骨はすばらしいらしい。
だから、悲しい事に虎の前足の骨は高値で取引されたようだ。
虎も災難だ。
成分的に虎の骨が他の哺乳類の骨に比べて、すぐれた薬効があるとは思えない。
いろいろな動物が中医学の名のもとに乱獲されたのは悲しい事実だ。
その中で、犀角とか穿山甲など、それなりの薬効もあるものもあるが、虎骨は他の哺乳類の骨でも問題ないだろう。
虎の前足以外の骨は、きっと類似の哺乳類の骨が沢山流通していたのではないだろう。
虎の前足だけば、他の哺乳類の骨と違うので偽物が少なかった。
だから高く流通した。
そんなからくりがあったのではと思う。
453.右腎は命門なのか
中医学では、腎は左右にあり、右は命門で左は腎陰とされる。
命門は腎陽の意味に近い。
ただ、個人的にはこの学説が正しいのかよく分からない。
心臓は左にあり、肝臓は右にあるのは確かだし、腎が2つあるのも正しい。
しかし左右の腎臓の役割が違うとは思えない。
中医学的な腎は腎臓の意味だけではない。
骨、成長、性ホルモン、そんなものも含めて腎と言っている。
しかし、それを含めて考えても、腎の左右の違いがよくわからない。
右を命門としたのは、脈診と関係がある。
右の脈は上から、肺、脾、命門となり、気とか陽と関係が深い。
これに対して、左の脈は、上から心、肝、腎陰となり、血や陰との関係が深い。
これに当てはめて考えたのだろう。
しかし、実際の臨床で、右の脈が弱いから陽虚、気虚とか、左が弱いから陰虚、血虚とは言えない。
40年以上、脈診しているが、そんな気配は感じない。
452.耳は腎だけで良いのか?
中医学では耳は腎との関係が深く、耳に関する処方は腎とかかわるものが多い。
確かに、急性のものは除くと、耳の衰えは老化と関係している。
老化に関わるのは腎だから、耳と腎の関係は切っても切れない。
だからと言って、耳の衰えは腎だけでは無いだろう。
例えば、耳鳴り。
慢性的な耳鳴りは、老化にかかわるもので、直しにくい。
耳鳴りの原因として、腎の老化以外に、肝と脾がかかわるものがある。
脾がおとろえ脾の気が昇らない。
それにつけこんで、肝の気が濁気と一緒にのぼって、耳鳴りを起こす。
治療としては、肝の気を降ろす事と、健脾して脾気を昇らせる事だ。
勿論、一人一人の体質は違うので、使う処方も違うが、耳はすべて腎からと言う訳にもいかないと思う。
451.目は肝と腎で良いのか?
中医学では、目は肝との関係がもっとも深く、肝腎同源の理論から腎との関係も重視されている。
それで、目にかかわる漢方は肝や腎と関係するものが多い。
たしかにそれは否定はしない。
しかし、それにとらわれすぎていないだろうか?
目は血流は大切だが、水の流れも大切だ。
水の流れを調節しているのは肺、脾、腎だ。
特に目と脾の関係はもっと重視するべきだろう。
健脾利湿、益気昇陽などの方法が大切だ。
450.肝は右?左?
中医学では肝は左にあるとされている。
昔は内蔵の位置はあまりしっかりとは把握されていなかったので、肝は左と思われていた。
しかし、今は肝が右にあることは誰でも知っている。
では、何故訂正されないのだろうか?
中医学では内蔵の働きは重視するが位置はあまり重視しない。
左なら左で困る事は無いというのが1つ目。
もう一つは、脈診との関係だ。
脈診で左は、心、肝、腎陰を見る。
肝腎同源で、肝血と腎陰は深い関係がある。
そうするとこの3つは血との関係が深い。
だから脈診で左は血を診るとされている。
心臓が左にある事と関係していると思う。
脈診で右は肺、脾、腎陽(命門)だ。
こちらは気との関係が深い。
だから脈診で右は気を診るとされている。
脈診は二千年以上受け継がれているから、いまさら肝の脈を右にもって行くわけにはいかない。
では、脈はそのままにして、肝は右としたらどうだろうか?
体内の気の流れは右降左昇になっている。
陰陽のマークを見た事があると思うが、正しい位置は、白が右から下におり、黒が左から上に昇っている。
白は肺の気、黒は肝の気を代表していて、肺の気は右から下に向かい、肝の気は左から上に向かっている。
肝が右にあるとすると、肺は左になる。
そうすると右降左昇の理論がくずれてしまう。
肝が左にあるのはわかっているが、そのままにしておこうとなった。
そこで考え出されたのは、肝は右にあるが、その働きは左にあるという考えだ。
今はこの考えが採用されている。
つまり肝の位置は、右とも左とも言えないと言う事なのだ。
449.脾の実証
中医学では脾の実証はあまり出てこない。
しかし、実際にはかなり多く存在するのではないかと思う。
実証は2つあり、一つは機能亢進で、もう一つは邪実だ。
脾が機能亢進になると、食欲が出すぎて食べ過ぎる。
そうすると、体内に脂肪などが蓄積されていく。
これらの脂肪がどこに蓄積されるかというと、中医学的な定義はないが私は脾に蓄積されていくと思う。
脾は肌肉を司るとされている。
この肌は、中国語では筋肉の事だ。
そうすると肌肉というのは皮膚ではなく筋肉だ。
しかし、実際はもう少し範囲がひろく、皮下脂肪も含めて考えると思う。
脾虚になると痩せて筋肉が落ちる。
だから脾は肌肉と関係があるが、痩せて落ちるのは筋肉だけでない。
皮下脂肪も減っていく。
つまり肌肉とは、筋肉と皮下脂肪をあわせたものだと考えている。
余分な皮下脂肪は、痰湿が脾にたまった状態と考えて良いだろう。
脾の瘀血も存在すると思う。
糖尿病などの場合は血管障害がおきやすく、瘀血の傾向が強い。
これは脾の瘀血と考えて良いだろう。
これらの事から、脾の実証は存在するが、中医学では何故かあまり議論されていない。
もう少し脾の実証について検証する必要があると思う。
448.腎の実証
腎に実証は無いという説と、腎にも実証はあるという説がある。
どうしてそうなってしまったのだろうか?
実は実証にも2種類ある。
一つは機能亢進、もう一つは邪実だ。
機能更新としての実は、日本漢方に近い。
日本漢方は体力があるのを実証、無いのを虚証としている。
この考え方もよく解らない。
体力が無いのを虚証とするのはまだ良いが、体力があるのは問題ない。
とすれば、体力が無いのを虚証、体力があるのは正常とするのが良いのではないか。
話がそれたが、機能亢進としての実証は、あまり多くは無い。
主に問題になるのは心と肝だ。
この2つは化火しやすく、肝火と心火になりやすい。
これは機能亢進といえる。
肺の機能亢進は少ないがあるにはあると思う。
しかし、腎に亢進はあるのだろうか。
あま思い浮かばない。
これが腎に実証が無いという理由だ。
しかし、邪実という意味なら、腎にも汚れは貯まる。
特に腎の瘀血、腎の湿熱、腎の痰湿は十分考えられる。
腎不全などは活血薬で改善するし、酒大黄などでも改善する。
だから腎の瘀血や湿熱は確かに存在すると思う。
次のページ
トップページに戻る