目次形式に切り替える447.土克水って本当にあるの?
中医学の五行の理論は矛盾が沢山あり、全面的に肯定する事は出来ない。
もともとあった五行の理論に臓腑をあてはめたのだから、合わない部分もある。
一番、おかしい部分は土克水だ。
五行で考えれば、水や池を土で埋めれば水はなくなる。
埋立地のようなものだ。
しかし、これが人間の体にどう当てはまるのかよく分からない。
相克は、生理的にはある臓が強くなりすぎないよう他の臓が抑制してバランスをとっていると考える。
また病理的には、ある臓が強くなりすぎて、関連する特定の臓が弱くなってしまう。
逆にある臓が弱くなると抑えが聞かなくなり、ある臓が強くなりすぎる。
相克は、一つの臓ともう一つの臓が1対1に結びつけられている。
それで、脾と腎の関係を見てみよう。
脾は腎が強くなりすぎないように見張っている。
脾が弱ると腎への抑制が聞かず、腎が強くなりすぎて病気になる。
脾が強くなりすぎると、腎を押さえつけ、腎が弱る。
どれも、全く想像できない。
そもそも腎には実証は無いという人もいる。
腎が強くなりすぎて困るというのは考えにくい。
また、脾も強くなりすぎて困るというのはあまりない。
脾が強くなりすぎ、食べ過ぎで太って腎を弱くする...なるほど。
少しはありそうだが、太って困るのは心、肝が先ではないだろうか?
と言うわけで、明確な水克土は無いというのが私の考えだ。
勿論、むりくり考えればあるかも知れない。
しかし、それはとうてい科学的ではないし、哲学的でもない。
446.肺と免疫
免疫のは大きく分けて2種類あり、細胞性免疫と液性免疫だ。
細胞性免疫は、中医学の衛気とだいたい同じだ。
いろいろな害から体を守っている。
衛気は腎で作られ肺に運ばれ、全身に流れるとされている。
骨髄を腎に含めれは腎で作られるというのは正しい。
(個人的には骨髄は肝腎同源の理論から肝に含めたいが。)
中医学ではリンパの流れは肺と三焦が関係している。
なので、肺は関係している。
さて、細胞性免疫はこれでまあ良いとして、問題は液性免疫、抗体についてだ。
抗体の存在については中医学は殆どふれていない。
はしかのように一度かかれば、2度はかからない病気があるので、気づいてもよさそうだが、気が付かなかった。
発疹をおこす病気はいくつもあり、それぞれの明確な区別があいまいだったのだろう。
とにかく抗体というものは気が付かなかった。
抗体は体を守るだけでなく、時に体を傷つける事もある。
体を守るべき抗体が暴走して体を傷つける。
この考え方は中医学には取り入れられていない。
取り入れられていないなら、作ってしまえと、私が作った理論が「宿邪」の理論だ。
これについては、このホームページの最後の方にとりあげてあるので時間があれば目をとお押してみて欲しい。
さて、話を戻そう。
抗体は何処で作られるのか。
白血球は血液の一部なので、血の生成と同じだ。
問題はリンパ球の教育の部分。
胸腺は肺として、パイエル板は脾だろう。
そうすると、抗体は血と脾と肺が関係する事がわかる。
ただ、私はどうしてもそこに肝気の流れが関係しているように思う。
肝気の流れは自律神経に近い。
ストレスが免疫に深くかかわる事も知られている。
そうすると、やはり抗体と関係するのは、脾、肺、肝となる。
昔から皮膚は肺の一部とされ、アトピーやアレルギーは皮膚や粘膜に多く見られるので肺と免疫の関係は重視されて来た。
近年、自己免疫疾患が注目され、肺以外にも、肝、脾との関係が注目されて来ている。
アレルギー体質の改善には、解表剤だけでなく、疏肝理気薬や健脾消導薬も必要だ。
さらに炎症反応が強い場合は、清熱解毒薬もよく使われている。
445.血は何処で作られる?
血は骨髄で作られると言う事は、今の人はみな知っている。
ただ、中医学が生まれた古代の人はこの事は解らなかった。
それで中医学では血の生成は、以下のように考えていた。
食べたものは脾に運ばれ、そこで吸収した精微物質は肺に運ばれ、胸中の宋気とまざりあい赤く変化して血となり、心と肺の機能により全身に運ばれる。
そうすると、今の理論とあわない。
あわない場合は、潔く訂正した方が良い。
1つ目の考えは、骨は腎なので骨髄も腎の一部。
だから血は腎で作られる、とする考え方だ。
この考え方の問題としては腎と血の関係はあまり深くない。
肝腎同源という理論のもとに、腎血は肝血に置き換えられている。
腎血があったとしても肝血との区別は曖昧なので、まとめて肝血で良い。
肝血虚の本当の意味は肝腎血虚なのだ。
だから、骨は腎でも骨髄は肝とする方がすっきりする。
これが2つ目の考え方だ。
最終的には、血は脾で生成された精微物質が肝(骨髄)に運ばれ、血となり、心に運ばれる。
心から肺に移行して胸中の宋気(酸素)に出会い、心にもどって全身に運ばれる。
これが現代医学を加味した新しい中医の理論だ。
私は古典的な中医学の血の生成を否定はしない。
ただ、その中に肝と肝腎同源としての腎の働きが組み入れられていないのが不備だと思う。
444.腎の血虚は無いのか?
腎も一つの臓器なので当然血虚があっても良いはずです。
ですが、腎の血虚とは言いません。
その理由ですが、2つ考えられます。
1.衝脈の存在
女性の生理を見ると、生理前には血が蓄えられます。その場所を衝脈と言います。
そして生理になると衝脈に蓄えられた血は一気に出ていきます。
衝脈は胃経につながり、胃経は口のまわりにつながります。
生理前にニキビなどが出来るのは衝脈がいっぱいになり、化熱するからと考えます。
ちなみに男性は衝脈がいっぱいになると髭になると言われています。
2.肝腎同源
血を蓄えるのは肝の働きです。
もし腎血というものがあったとして、肝血との区別があいまいです。
肝腎同源の理論から、肝血を補えば自動的に腎血も補われます。
ですから、わざわざ腎血虚とか、補腎血と言わなくてもあまり問題が起こらないのです。
443.病気の原因と中医学の対応
起こり得る病気の原因と中医学的な対応を考えてみました。
今考えたのは14種類ですが、もっとあるかも知れません。
1.怪我や火傷などの外傷
中国の歴史は戦いの歴史でもあり、兵士の怪我の治療には漢方薬が用いられてきました。
このため、怪我の治療には多くの優れた処方が残されています。
2.細菌やウイルス、寄生虫などの侵入
中医学が生まれた時代には細菌やウイルスの存在は知られていませんでした。
最初は気候の変動などが原因とされてましたが、のちに伝染病が知られ、その原因として汚れた空気が考えられました。
また細菌やウイルスの存在はわからなくても、傷寒論や温病論など治療のために沢山の処方が考えられました。葛根湯や銀翹散など今でもよく使われています。
3.腫瘍など、おそらく遺伝的の損傷や不要なエピゲノムの不良による不要な遺伝子発現
中医学ではガンの知識や治療はあまりありません。原因としては昔の人は寿命が短く、いわゆるガン年齢になる前に亡くなっていたからではと思います。
4.遺伝病 必要な遺伝子の欠損
この分野は中医学では難しいでしょう。西洋医学では将来的には遺伝子の移植などが出来るようになるかもしれません。
5.免疫疾患
これはアレルギーなど外部からの抗原によるものと、自分の体に反応してしまう自己免疫疾患があります。
中医学ではこの2つはあまり区別しません。
そのため、西洋医学では難しい自己免疫疾患の治療について、中医学は一定の効果があると思われます。
抗体にかかわる病気は以前、「宿邪論」で述べた事があります。
6.ホルモンバランスの異常
性ホルモンの作用は腎気と考えています。
インスリンは脾気、副腎皮質ホルモンは衛気、甲状腺は腎陽や心気などそれぞれの臓腑の働きに割り振られて沢山の処方が考えれています。
7.自律神経の乱れ
自律神経は中医学的には気の流れです。
肝と脾との関係が深く、得に疏肝理気という方法がストレスなどによる自律神経失調によく使われます。
8.暴飲暴食などによる胃腸障害
消化を助ける消導薬という処方がいくつもあります。
9.食生活の乱れや運動不足による生活習慣病
血流の障害や体内に分解しにくい不要な汚れがたまってしまう場合が考えられます。
遺伝的な素因も関係しています。
これに対して、汚れをきれいにする処方があります。
血の汚れを綺麗にして血流を改善する活血化瘀
脂の汚れ、水の汚れ、繊維の汚れを綺麗にする化痰薬などがあります。
11.老化
この分野は昔から執拗に処方が研究され、時に行き過ぎた薬害などもありました。
今は重金属を含む処方は使われなくなりましたが、昔はよく使われていたようです。
中医学が老化に対してどの程度の効果が出るかは未知数です。
老化は遺伝子発言、エピゲノムにかかわる部分が多く、この分野の薬は西洋医学でもまだ開発されていないようです。
私は補腎薬がエピゲノムに働きかける可能性があると思っています。
12.過労 睡眠不足
体力をつける漢方や、疲労回復の漢方は沢山あります。
勿論、それだけにたよるのは良くないですが、黄耆、人参、冬虫夏草など利用価値はあります。
13.体を守る菌の不足 胃腸や皮膚、口腔、皮膚、子宮内や膣など
皮膚や粘膜を潤す漢方、たとえば甘露飲などが良い細菌を増やす作用があるかもしれません。
今後の研究が待たれます。
14.栄養失調
漢方薬は食事の代わりにはなりません。
ただ、栄養の吸収を助ける作用はあります。
私がいつも言うのは「漢方薬は大工さん。どんなに腕の良い大工さんでも材料がなければ家はつくれません。」と言っています。
中国語では「どんなに料理の上手な奥さんでも、米がなければご飯は炊けない」と言います。
442.中医学で脳は何処にあるの?
人間の体の中で一番大切なのは何処かと考えてみます。
勿論、どの臓腑も大切ですが、大抵の臓腑は機械で置き換えられます。
人工肺、人工心臓、透析など。
そうすると肝臓はまだ人工的には難しいでしょうが、肝臓は移植できます。
そうなるとやはり脳でしょう。
人工知能はできても人工脳は出来ないでしょうし、脳移植が成功しても記憶も人格も変わってしまいます。
では、その一番大切な脳は、中医学で何処にあると考えているのでしょうか?
脳の働きは心にあると考えています。
心は心臓だけでなく、心(こころ)とも言えるからです。
中医学の基礎になる黄帝内経が出来たころは、まだ脳という臓器はよく理解されていませんでした。
興奮すると、心臓がドキドキします。
だから、ものを考えているのは脳ではなく、心だと考えていたのでしょう。
しかし、時代がすすんでものを考えているのは心臓ではなく脳だとわかってきました。
この場合の脳は、髄海といって、脊髄の集まった海と考えました。
脊髄は、骨の一部で五臓では腎の一部です。
そうすると髄海は腎の一部となります。
さあ、困った事になりました。
働きとしての脳は心に属し、物体としの脳は腎の一部なのです。
脳を治療する場合、心を治療するか腎を治療するかの問題が出てきます。
これは中医学で臓腑を無理やり五行に当てはめた弊害です。
私の考えでは脳は独立して臓として、心でも腎でもない、新しいカテゴリーを作るべきではと思っています。
五臓以外に五行をむりくり当てはめた弊害は季節にもあります。
季節は春・夏・秋・冬の4つしかないのに五行に当てはめるため無理矢理に長夏という季節を作ってしまいました。
さらに長夏はいつなのかというのも2つの説があります。
そんなあいまいな季節を作ってまで五行に当てはめる必要はないのではと思います。
441.肝は脾との関係だけでない
五行の相克で一番良く使われるのは木克土だ。
肝が強くなると土が弱るという図式だ。
肝は自律神経のようなもので特に交感神経に近い。
ストレスなどで交感神経が興奮すると胃腸の働きが悪くなり、食欲がなくなる。
これが肝脾不和と良い、木克土で説明している。
確かに、交感神経を肝、副交感神経を腎とすればこの関係は成り立つかもれない。
しかし、交感神経が興奮すると影響は胃腸だけでない。
心臓がドキドキして不眠になる。これは心に影響したのだ。
また、呼吸が浅くなったり、過呼吸になる。胸がつまる感じで呼吸がしづらくなる。
これは肝が肺をいじめているのだ。
ストレスが長く続くと肝火上炎になり、肝血や肝水の不足になる。
不足した分を補うように腎から腎陰を吸い上げる。
これは肝が腎をいじめているのだ。
そうすると、肝はすべての臓をいじめる性質がある。
これを「肝は五臓の賊である」と言っている。
このように肝の相克は脾だけでなく、すべての臓と相克関係にあると考えられる。
440.肝の陰について
肝陰について考えると、実は2種類に分けられる。
一つは肝血。そしてもう一つは肝血以外の肝陰。
この肝血以外の肝陰は名前が無い。
そこで、ここでは「肝水」という名前をつけたい。
肝血を補う薬と肝水を補う薬は明確に違う。
肝血を補う薬は沢山あるが、肝水を補うものは少ない。
例えば枸杞子、女貞子、旱蓮草などだ。
枸杞子は肝水だけでなく肝血も補う作用があるし、女貞子と旱蓮草は肝水だけでなく腎陰も補う。
肝水は肝血や腎陰と相互に補いあっているのだ。
必要に応じて肝水は肝血や腎陰に変化するのだ。
肝血も肝水になり、さらに腎陰になる事が出来る。
だから腎陰を補う時に肝血を補う方法もあるのだ。
五行の図を見ると腎から肝へ向かうルートはあるが肝から腎に向かうルートは無い。
しかし、腎陰虚の時に肝血や肝水を補う方法もあるのだ。
これを中医学では肝腎同源と言っている。
腎から肝に向かう矢印は→ではなく⇔にするへきなのだ。
439.黄帝内経の哲学的思想 陰と陽
黄帝内経は、体の内部の状態、生理的働き、病理、養生などを観察して、哲学的な理論で説明している。
この中で、陰陽の思想がある。
究極的に言えば陰は目に見えるもの、陽は目に見えないもの。
ロウソクは陰だが炎は陽だ。
ロウソクが燃えると炎が出来、最後にはロウソクは燃え尽きてなくなる。
これは陰が陽に転化したと考えられる。
ちょっと相対性理論の質量とエネルギーの関係にも似ている。
冷たいコップのまわりに水滴がつく。
これは水蒸気という目に見えない気が、冷やされて結露し目に見える水に転化した。
陽が陰に転化したのだ。
438.中医学と哲学
中医学の理論の基礎になっているのが黄帝内経。
黄帝内経は科学がまだ未発達の時代に体の内部の働きを観察して哲学的な理論を作った。
当てはまっている部分が非常に多いのだが、ちょっと強引な部分もある。
中国の古典哲学に五行説というのがあり、色々なものは木、火、土、金、水のどれかの性質を持つというものだ。
そして自然界の色々なものを五行に当てはめた。
人間の臓腑も五行に当てはめている。
実はこれはかなり強引で、実情にあわない部分も多い。
だから五行に関しては、全面的に正しいと思わない事が大切だ。
さらに黄帝内経には五運六気という理論も盛り込まれている。
これは今の四柱推命に似ている。
確かに気候には周期性があるのは解るが、それが60年周期とは思わない。
今の中医学の世界では、五運六気を治療に取り入れている治療家は少ないし、それで良いと思っている。
中医学が正しい方向に発展するためには、あまり迷信的な理論は使わないようにする方が良いと思う。
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